第419章

小林絵里が化粧室から出て、エレベーターの前を通りかかった、その瞬間――中から出てきた古川修一に目撃された。

彼はちょうど通話中で、彼女の姿を視界の端に捉えると、ふっと眉を上げて言う。

「当ててみろよ。九号公館で、誰を見たと思う?」

相手は坂田和也だった。冷えた声で返す。

「お前の親父か」

「おい!」

古川修一が悪態をつき、すぐさま続ける。

「ふざけんな。お前の宝物だよ。大事な大事な心肝だ」

坂田和也の声が、さらに低くなる。

「見間違いじゃないんだな?」

古川修一は鼻で笑った。

「俺、目ぇ腐ってねえし。目の前を通ってったんだぞ。あの感じ、明らかに飲みすぎだろ。ったく……夜...

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