第439章

高川寒彦は伏し目がちになり、瞳の奥で感情が渦を巻いた。濃い闇がどろりと沈み、ビニール膜みたいに、いくらかき混ぜても溶けそうにない。

しばらくして、ようやくエンジンをかけ、その場を離れた。

上の階。

古川修一は松本桜を抱えたまま、長いこと落ち着くのを待っていた。

「……いい加減にしない?」

松本桜は押さえつけられて息ができない。

この男、いつまで抱きついてるつもりなの。

古川修一が歯を食いしばる。

「今の、もう一回言ってみろ」

体温が伝わってきて、松本桜はそれ以上強がれなくなった。だって今、上から押さえられてるんだから。

起き上がれる隙でもくれたら、絶対に前歯へし折ってやる...

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