第473章

小林絵里は首をかしげた。「ロビーじゃ手続きできないんですか?」

職員が申し訳なさそうに言う。「お客様、本日はロビーが混み合っておりまして……お二人は上の階へお願いいたします」

絵里は離婚手続きの窓口にちらりと目を向けた。たしかに、人が多い。

――いまの結婚って、そんなに続かないものなの?

深く考えるのはやめ、職員に促されるまま階段を上った。

主任のオフィスでも、二人は必要事項をいくつか書かされた。すぐに話題は財産分与へ移る。

坂田和也が一枚の書類を差し出した。「ここに、おまえへの補償が書いてある」

絵里は受け取って目を通し、ある名前を見つけた瞬間、瞳がすっと縮む。

楓の苑の家...

ログインして続きを読む