第476章

夏目夕子は弁当箱を提げたまま、オフィスへと足を向けた。

松本幸雄がそれを見て、慌てて言う。

「夏目嬢、お客様がいらしてまして……よろしければ、少し待ってからお入りになったほうが」

夏目夕子は彼を見やる。どこか目が泳いでいる。その様子に、瞳の奥へ小さな光が差した。

「もうお昼なのに。今さら、どんなお客様がいるっていうの?」

そう言い捨てると、そのままオフィスへ歩いていく。

松本幸雄は彼女の背中を見送っただけで、止めようとはしなかった。

夏目夕子は扉を押し開けて中へ入る。すると――坂田和也の隣に女が立っていて、身を寄せるように何か囁いていた。距離感がやけに近い。

その光景を見た瞬...

ログインして続きを読む