第493章

小林絵里はびくっと肩を震わせ、とっさに振り返った。だが目に入ったのは、轟音を残して走り去るバイクの影が、視界の端で小さくなっていくところだけだった。

「ありがとうございます」

絵里は向き直り、自分の腕をつかんで引き止めてくれた相手を見る。顔を確かめた瞬間、わずかに息をのんだ。

「気にするな」

若い男だった。背が高く、無駄のない細身。マスクで口元は隠れているが、覗く目は切れ長で鋭い。前髪が自然に落ちて、冷えた印象をいくらか覆い隠している。

一瞬、意識がふわりと揺れた。

この人……坂田和也に、似てる。

男はそれ以上何も言わず、踵を返して歩き出す。

「待って!」

絵里は慌てて回り...

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