第509章

小林絵里は靴を履き替えて中へ入った。男の冷えた視線が、即座に彼女へ落ちる。

彼女は何も言わず、先に水を一杯飲んだ。

背後で、足音。

小林絵里がコップをテーブルに置いた、その瞬間。肩がきゅっと締まる。坂田和也がそのまま彼女の身体をくるりと向けた。

長身の影が覆いかぶさる。切れ長の目が重く彼女を射抜き、低い声で問いかけた。

「さっき言ってたこと……どういう意味だ?」

小林絵りは彼の手を払いのけ、前から離れて距離を取る。今の関係で、あんなふうに近づくのはふさわしくない。

淡々と言った。

「今、公にするのはわたしの計画に不利です」

避けられたことに坂田和也はわずかに苛立ったが、その...

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