第524章

「頼むって言えば……考えてやってもいい。お前の芝居に付き合ってやる」

 背後から、男の澄んだ声が飛んだ。

 小林絵里は足を止めかけ、冷えた声で言い捨てる。

「……死ねばいいだけよ」

 頼む?

 冗談じゃない。

 坂田和也が鼻で笑った。

「へえ、骨があるじゃないか。けど、今までのことを思い出してみろよ。ずっとお前を殺そうとしてた斉藤健也。あの手この手でお前を嵌めた夏目夕子。この先は誰だ? お前、いつまで持つ? 死ぬなんて、口じゃどうとでも言える。――本当に死ねるのか?」

 一語一語が胸の奥に叩き込まれ、理性がじわりと削られていく。足取りが、勝手に重くなった。絵里はバッグの取っ手...

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