第528章

小林絵里は何も言わなかった。最初から、考えていたのはそれだけだった。

松本桜が続ける。

「ただ大事なものを奪うだけじゃない。あんたが味わった絶望も、ちゃんと味わわせるの。だってこの世に本当の意味での『共感』なんてないでしょ。死にかける怖さを知れば、命がどれだけ尊いか分かるはずよ」

小林絵里はぱちりと瞬きした。

「……なんか、すごく筋が通ってる気がする」

松本桜は自信満々に笑う。

「でしょ? あたしの頭、たまに回転速いんだよね」

小林絵里は少し考え込み、口にした。

「でも……それ、犯罪だよ」

松本桜はやれやれと息を吐く。

「夏目夕子があんたにあんなことしたとき、犯罪かどうか...

ログインして続きを読む