第529章

もう、出る必要なんてない。

小林絵里はスマホを脇へ置き、もう一口だけ水を飲んでから寝室へ戻った。シャワーを浴びて、そのままベッドに沈む。

……

病院。

病室の灯りはこうこうと明るい。

切られた通話画面を見つめたまま、坂田和也は端正で鋭い顔を陰らせた。重たく息苦しい空気が、じわじわと病室を満たしていく。

そのとき、病室のドアが開いた。

坂田和也は反射的に視線を向ける。入ってきたのが古川修一だとわかると、眉をひそめ、すぐに目を逸らした。

「よぉ。俺が入ってきたってわかった途端、がっかりした顔だな?」

古川修一はずかずかと近づき、椅子を引いて腰を下ろす。服には酒の匂いがまとわりつ...

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