第531章

松本桜は少し驚いた。ふだん眠りが浅い人間なのに、あれだけドアを叩かれても起きないなんて。

――酒のせい?

それ以上考えるのはやめ、あくびを噛み殺しながら外へ出る。ドアスコープに顔を寄せて覗き、そこに立つ人物を見た瞬間、目を細めた。

……なんで、こいつ?

バンバン!

考え込む間もなく、外の男がまたドアを叩き始めた。

松本桜は勢いよくドアを開けた。古川修一はまだ手を上げたままで、今にも叩き続けるつもりらしい。

あと二秒遅かったら、その平手がドアじゃなく、こっちに飛んでたかもしれない。

「こんな真夜中に、何叩いてんの? 頭おかしいの?」

松本桜が不機嫌そうに吐き捨てると、古川修一...

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