第535章

「ええ、わかりました」

 小林絵里はこくりとうなずくと、そのままエレベーター脇へ歩いていき、庄司玉輝が戻ってくるのを待った。

 視線を落としてスマホを見ていると、ちょうどそのとき、エレベーターの扉が開く。続いて、驚いたような声が弾んだ。

「奥様?」

 小林絵里が顔を上げると、松本幸雄がエレベーターから降りてきたところだった。表情には喜色がにじんでいる。

「坂田社長に会いにいらしたんですか?」

 絵里は淡々と首を横に振る。

「違います」

 松本幸雄は一瞬きょとんとし、気まずそうに鼻先を指でこすった。冷たい態度を察したのか、ぎこちない笑みを浮かべたまま、勝手に言葉を続ける。

「...

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