第548章

小林絵里「……」

 この前から二人の間に妙な空気があるのは気づいていた。けれど松本桜の口からはっきり聞かされると、絵里は言葉を失う。

 ここまで来たのには、ちゃんと前兆があった。

 古川修一の桜への執着は異様なほど強い。なのに桜は、あまりにも無防備だった。

 ただ……今になって逃げるなんて、遅すぎないだろうか。

 絵里がその不安を口にすると、桜は身を寄せて、こそこそと囁いた。

「絵里、もう決めてるの。飛行機も電車も使わない。バスで行くよ。ほら、田舎道を走るようなやつ。Y市さえ出られたら、あいつが探したって見つけられないから」

 絵里は眉をひそめる。

「でも、それは危ないよ」

...

ログインして続きを読む