第551章

でも――彼女は違った。

  車が止まる。小林絵里の瞳に宿っていた光が、じわりじわりと消えていった。

  「松本桜……あの人のこと、好きなの?」

  絵里が囁くように訊く。

  「好きじゃない」

  古川修一に狙い撃ちにされてきた回数は、もう数えるのも馬鹿らしいほどだ。たまたま何度か関係を持っただけで、好きになるはずがない。

  「……そう」

  絵里は短く応じると、すぐにドアを開けて車を降りた。

  「絵里、どこ行くの?」

  桜も慌てて後を追い、車外へ出る。

  その瞬間、前後を数台の車に挟まれていることに気づいた。白々しいヘッドライトが、この狭い一角だけを昼間みたいに...

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