第564章

坂田和也は彼女を一瞥すると、無言である階のボタンを押した。

 小林絵里はその手元を見て、表情をこわばらせる。

「……どこへ行くんですか」

「診せる」坂田和也の低い声は、ひやりと冷たかった。「おまえの診察だ」

「わたし、病気じゃないです。行きません」

 坂田和也は視線を外さない。

「もう病院の中だ。逃げ切れると思うか?」

 小林絵里の顔色が、さらに悪くなる。

 すぐに目的の階へ着き、扉が開く。坂田和也は有無を言わせず彼女の手を掴み、そのまま医師の診察室へと歩き出した。

 ここは坂田グループ系列の病院だ。医長以上の医師は皆、坂田和也の顔を知っていて、見かければ恭しく「坂田社長」...

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