第574章

高川寒彦はその光景を目にした途端、顔色を変え、慌てて前へ出て小林絵里を引き戻そうとした。

坂田和也は振り返りもせずに言い放つ。

「夫婦の問題に口を出すな。余計な真似をしたら……俺の手が滑って、こいつが落ちるかもしれない。そうなったら、お前も一緒に下まで付き合え」

高川寒彦の手が、宙でぴたりと止まった。暗い眼差しで坂田和也を見据え、幾つもの思いが脳裏を駆け巡る。それでも結局、彼は手を引っ込めた。

落ちるのが怖くて、小林絵里は坂田和也の服を必死に掴む。身を捻って下を見れば、個室は9階。ここから落ちたら――まず助からない。

「坂田和也……あなた、正気じゃないの?」

恐怖を押し殺し、震え...

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