第587章

坂田和也は凛々しい長い眉をすっと持ち上げた。彼女が追いついてくるとは思っていなかったのだろう。歩調は終始、せかせかもしなければ、だらだらでもない。肩で息をして頬を赤らめ、心臓まで跳ねている小林絵里とは対照的に、彼の呼吸はやけに落ち着いていた。――日頃鍛えている差。山登り程度、まったく苦にならないという顔だ。

小林絵里はその視線を気に留めず、ただ前へ進む。ときおり周囲へ目をやると、登れば登るほど景色が変わっていくのがわかる。絵里はスマホを取り出し、きれいだと思った風景を撮っては、松本桜へ送った。

小林絵里【今度、暇なとき一緒に山登りしない?】

すぐに松本桜から電話がかかってきた。声には驚...

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