第588章

小林絵里は相手にする気にもなれず、足早に階段を上っていった。けれど坂田和也に追いつかれるのは、あまりにも簡単だった。

彼は彼女と二段ぶんの距離を保ったまま、背後から声を投げる。

「小林絵里。俺を誘うの、誘わないの。なあ?」

「……やだ」

「そりゃ薄情だろ。俺が山に連れてきて景色も見せてやったのに、おまえの飯は食わせてもくれないのかよ」

「……」

「はぁ……それに俺、あの日は一晩ついててやったし、朝だって起きて朝飯まで作った。食うだけ食って知らん顔とか、ないだろ。まさかおまえが、そういう女だとは思わなかったわ」

坂田和也は途切れることなく、後ろから小言を重ねてくる。

小林絵里は...

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