第590章

小林絵里は電話をそのまま切った。

 坂田和也がちらりと彼女を見て言う。

「なんで出ない?」

「あなたに関係ないでしょ」

「はっ」

 坂田和也は思わず笑った。まさか、こんな反抗的な顔もするとは。

 小林絵里は窓の外に視線を向けたまま、胸の奥がひゅっと持ち上がる。

 すると坂田和也が、また口を開いた。

「出られないってことは、俺に知られたくない相手か? 誰だ。高川寒彦か?」

 小林絵里の眉がきゅっと寄る。彼を睨みつけた。

「坂田和也、いい加減にして」

 細長い黒い瞳が彼女を捉える。

「じゃあ、なんで電話に出ない?」

 小林絵里は一度まぶたを閉じ、濁った息を吐き出してから...

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