第616章

「小林絵里?」

 坂田和也が呼びかけたが、受話器の向こうから返事はなかった。

 かすかに届くのは、規則正しい寝息だけ。

 彼は喉の奥で低く笑い、通話を切らずにそのままスピーカーにした。すう、すう、と耳に入る呼吸。それだけで、ささくれていた心がふっと静まっていく。

 ――いま、彼女が隣にいてくれたなら。もっと安心できるのに。

「……」

 翌朝。

 小林絵里は目を開けるなり、反射的にスマホを手に取って通知を確認しようとして――画面が真っ黒なままなのに気づいた。

 え?

 なにこれ。電源、落ちてる?

 困惑しながら充電ケーブルを挿し、起動を待つ。

 しばらくして立て続けに通知...

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