第62章

車はすでに外で待機していた。

車に乗り込むと、小林絵里は少し戸惑いながら口を開いた。

「このまま帰るの?」

和也が冷淡に返す。

「じゃあ、明日の朝食でも食べてから帰るか?」

「……」

まともに話しかけたわたしが馬鹿だった!

車内に一瞬、沈黙が降りた。

ホテルに戻ると、絵里は真っ先に部屋へ入り、着替えとシャワーを済ませた。

バスローブを羽織ってバスルームから出ると、和也がスマートフォンを耳に当てているのが見えた。その表情は穏やかで、微かに「夕子」と呼ぶ声が漏れ聞こえてくる。

絵里はすぐさま踵を返し、寝室へと戻った。

本当に、最悪。

ベッドに横たわりスマートフォンを握りし...

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