第624章

「ネクタイにしない?」

松本桜は壁にずらりと並ぶネクタイを見上げ、きらきらした瞳で小林絵里を振り返った。

小林絵里は言う。「それ、あんまり良くないんじゃ……」

「何が良くないの? 二人とも独身だし。ネクタイなんてただの飾りでしょ。そんな堅苦しく考えなくていいって」

それでも小林絵里は、やっぱり気が進まなかった。

店内をぐるりと見回す。ここはハイブランドだ。シャツ一枚でも10万から、という世界。

小林絵里はシャツのラックへ歩み寄り、しばらく迷ってから白い一着を抜き取った。

「これならどう?」

松本桜が覗き込んで、こくりとうなずく。

「いいと思う。でもさ、寒彦さんって、こういう...

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