第636章

  気づけば、小林絵里が入院して療養を始めてから半月が経っていた。もう床から降りて歩けるようにはなったものの、無理は禁物。少しずつ、ゆっくり――それが医師の言いつけだ。

  脛の骨折は、きちんと時間をかけて治さないといけない。

  その日、絵里は歩く練習をしていた。傍らには松本桜が付き添っている。と、病室のドアが不意に開いた。

 二人が顔を上げると、江口寧々が入ってくるところだった。

  桜が眉をひそめる。

「何しに来たの」

  寧々は季節ものの高級ブランドの新作に身を包み、巻いた長髪を肩に流していた。メイクも隙がなく整っている。病衣姿で、どこか弱々しく青白い絵里を見て、口元にう...

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