第638章

松本幸雄はそれを見て、これ以上は口を出さなかった。

坂田和也の様子からして、どうやら最初から織り込み済みだ。なら、手もとにはすでに対処の筋書きがあるのだろう。

松本幸雄は踵を返し、社長室を後にした。

坂田和也は手を止めた。端正で鋭い顔立ちに浮かぶ表情は相変わらず冷ややかで淡い。だが、漆黒の瞳の奥だけが、かすかな深みを帯びていた。

……

病院。

松本桜は招待状をそのままゴミ箱へ放り投げた。

「最っ悪。坂田和也って、なんでいつも人として終わってるの? まだ離婚もしてないのに、もう次を探してるとか……気持ち悪すぎ」

小林絵里は淡々と言う。

「気持ち悪いのなんて、今さら一回や二回じ...

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