第642章

逆立った松本桜を見て、坂田和也の表情はさらに陰った。

「……失せろ」

薄い唇がわずかに開き、吐き捨てるように一言。全身から冷えきった殺気がにじむ。

松本桜はびくりと肩を震わせた。内心の自信なんて、ほとんどない。彼女はただの一般人だ。坂田和也が相手では、勝負にもならない。

その気になれば――彼は彼女の首を、蟻を潰すみたいに簡単に折れる。

それでも、退けなかった。

絵里を守らなきゃ。

松本桜は大きく息を吸い込み、言い切った。

「坂田和也。まず、今まで絵里にしてきたことは置いとく。離婚のこと――なんであの子を騙したの? あんた、絵里のこと愛してるの?」

坂田和也の顔色はますます冷...

ログインして続きを読む