第646章

「絵里、順調に回復してるみたいね。顔色もずいぶん良くなったわ」

 高橋雲が病室へ入ってくる。口元には、いつもより柔らかな笑み。

 名だたるラグジュアリーブランドのオートクチュールのセットアップが、彼女の身に完璧に馴染んでいた。立っているだけで、空気が一段きらびやぐ。

 姿を認めた小林絵里は、はっと目を見開いたあと、少し間を置いて言った。

「坂田夫人……わたしに何かご用ですか」

 高橋雲は椅子を引き寄せ、ベッドの縁に腰を下ろす。笑顔は親しげで、距離を詰めるのが上手い。

「和也のこと、もう聞いてるでしょう?」

 小林絵里は淡くうなずいた。

「はい」

 高橋雲は小さく息を吐く。

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