第650章

「負けるって?」

 坂田和也は、可笑しくてたまらない冗談でも聞いたみたいに鼻で笑った。

「俺とあいつの間に問題なんてねえ。裁判所が、なんで離婚を認める?」

 高川寒彦が言い返す。

「結婚してるのに、無視し続ける。――それは問題じゃないのか?」

 坂田和也の凛とした長い眉が、ふっと持ち上がった。視線が小林絵里へ向く。

「俺がおまえに冷たくしたか?」

 小林絵里は唇をきゅっと結び、黙ったまま俯いた。

 ――やっぱり。胸の奥に、ずっと引っかかっていた不安がむくむくと膨らむ。

 表向き、坂田和也と自分の間に揉め事はない。そんな状態で、本当に裁判所は離婚を認めるのだろうか。

 ただ...

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