第651章

今さらになっても、あの男はまだ彼女を脅している。

本気で、彼女が怯むと思っているのだろうか。

「問題ありません」

藤原景丞は薄く笑うと、すぐに身を翻してバルコニーへ出た。そこで電話をかけはじめる。

松本桜は興奮した様子で小林絵里の手をぎゅっと握った。

「もうすぐ自由になれるよ!」

小林絵里はかすかに微笑み、坂田和也へ視線を投げた。

彼は目を伏せたまま。整った顔立ちは相変わらず鋭く美しいのに、全身から漂う気配は冷えきっている。いま何を考えているのか、誰にもわからなかった。

そのとき、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。

料理の配達だ。

松本桜が立ち上がって受け取りに行き、テ...

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