第652章

「それで、もうお腹いっぱい?」

 坂田和也は彼女を見つめ、真顔で言った。

「食べる量、少なすぎるだろ」

 小林絵里は冷ややかに一瞥する。

「今さら、わたしがどれだけ食べたかまで管理するつもり?」

 坂田和也は眉を上げ、それ以上は言い返さなかった。代わりに彼女の茶碗をすっと引き寄せ、残っていた分を平然と口に運ぶ。

 小林絵里は、その光景にわずかに目を見開いた。

 まだ残っているのに……それを、躊躇いもなく。

 周囲も一瞬、言葉を失う。

 けれど――別に、おかしくはないのかもしれない。

 今は夫婦だ。

 離婚訴訟の最中だとしても、かつては確かに、愛し合っていたのだから。

...

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