第653章

高川寒彦の、いつもはどこか気だるげな笑みを湛えている瞳が、今は真剣そのものの眼差しで小林絵里を見つめていた。

これまでの彼は、力の抜けた気ままな態度で、いろんな色に染めた髪のまま彼女の前に現れていたのに。

絵里はふと気づく。いつの間にか、彼は黒髪に戻している。そういえば――ほかの色の髪を、もうずいぶん見ていない気がした。

絵里は唇を動かし、かすかに笑う。

「うん、わかった」

寒彦は手を伸ばし、くしゃりと彼女の頭を撫でた。瞳にも笑みがふわりと広がる。

「じゃあ、ちゃんと休めよ。近いうちに、また顔出す」

「うん」

絵里は頷き、彼の背中を見送った。

松本桜が見送りを終えて戻ってく...

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