第66章

「これ以上どいてくれないと、俺、本当にダメかもしれないんだが」

和也がかすれた声で呟いた。

慌てて体を離した小林絵里は、その時になってようやく気がついた。彼の左腕は包帯でぐるぐる巻きにされて胸の前に吊るされ、額にもガーゼが当てられている。どこか滑稽な姿だった。

どうやら外傷だけのようだ。

絵里は大きく胸を撫で下ろし、すぐさま彼を睨みつけた。

「無事なら無事って、どうして早く言ってくれないのよ」

坂田和也は悪びれもせず瞬きをした。

「お前の泣き声で目が覚めたんだよ」

もともと昏睡状態にあったが、意識がぼんやりと浮上してきたところで、彼女が我を忘れて泣きじゃくる声が耳に届いたのだ...

ログインして続きを読む