第660章

小林絵里はびくりとして振り返った。少し離れた場所に坂田和也が立っている。手には湯気の立つカップ。ついさっき出てきたばかりなのだろう。

 彼女は眉をひそめる。

「……わたしの話、盗み聞きしてたの?」

 坂田和也は歩み寄り、隣の椅子に腰を下ろした。彼もまた外へ視線を向ける。横顔の輪郭はくっきりとしていて、前髪が落ちるぶん、どこか少年めいた雰囲気が増していた。

 小林絵里は一瞬、目を瞬かせる。初めて出会った頃の彼が、ふいに重なった気がした。

「高橋雲に、俺へ毒を盛れって言われたか?」

 外を見たまま、坂田和也が淡々と問う。

「……どうして、それを」

 小林絵里は息をのむ。

 坂田...

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