第661章

あれは高川寒彦の問題であって、わたしは別に、彼と一緒になるつもりなんてない。

けれど――坂田和也がこちらを見る目は、時間が経つほど冷えていった。

「いいだろう」

鼻で笑うように言い捨て、彼は立ち上がってそのまま出ていく。

小林絵里は眉をひそめた。訳がわからない――何それ。

視線を外へ戻す。空は鉛色に沈み、ぽつ、ぽつ、と雨が落ち始めていた。

「小林嬢、雨になります。中へお入りください」

家政婦の声。

「ええ、わかりました」

返事をして立ち上がり、室内へ戻ろうとした、そのとき。坂田和也のスマホが目に入った。

忘れていったらしい。

小林絵里は何気なく手に取り、彼の部屋へ向かう...

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