第669章

「絵里、怖がるな。必ず助け出してやる!」

 高川寒彦が工場の中へ向かって叫んだ。

「おい!」斉藤健也が露骨に不機嫌な顔で睨みつける。「俺のこと、いない扱いかよ。目の前で勝手に呼びかけ始めるとか、ナメてんのか?」

 高川寒彦は斉藤健也の顔に視線を据えたまま言う。

「話を聞く限り、お前は坂田和也にも連絡して、あいつからも金を取るつもりだった。つまり――俺が払っても、坂田が払わなかったら、お前は結局、解放しない。そういうことだろ」

「その通りだ」

 斉藤健也はライターを弄ぶ。カチ、カチ、と点けては消し、点けては消し。その軽い音が妙に神経を逆撫でした。

 高川寒彦は冷えた目で言い放つ。...

ログインして続きを読む