第670章

斉藤健也の顔色が、案の定さっと悪くなった。手の中のナイフをきつく握りしめ、目の奥で感情が渦を巻く。

「何の話だよ。金が欲しい、ここを出たい。それだけだ。他の連中とは関係ない!」

高川寒彦がさらに言葉を重ねようとした、その瞬間。しつこいほどの着信音が、また鳴り出した。

眉間にしわを寄せ、端末を取り出して通話を繋ぐ。

「未沙、どうした?」

泣きじゃくる小嶋未沙の声が耳に飛び込んでくる。

「寒彦さん……帰ってきて、早く帰ってきて……わたし、怪我したの。すごく痛い……」

「救急車は呼んだのか?」

未沙の嗚咽はさらに激しくなる。

「呼んだ。でも、寒彦さん……会いたいの。そばにいてくれ...

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