第671章

坂田和也は小林絵里を見た。「走れるか?」

「……うん」

小林絵里は小さくうなずく。

坂田和也は彼女の手をきつく握りしめ、ふっと顔を上げた。天井――今にも落ちそうに軋む梁が見える。

瞳に冷えた色が広がる。

「走れ!」

二人は一気に出口へ駆けだした。

炎が衣服を舐めるようにまとわりつく。それでも構っていられない。視線はただ、出口だけを追っていた。

「バキッ……」

そのとき、頭上から木が裂ける音がした。

小林絵里の胸がひゅっと縮む。反応するより早く、背中を強く突き飛ばされた。

「ガンッ!」

直後、背後で重いものが落ちる音。火が一瞬、ぶわっと押し戻されたように消えかける。

...

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