第679章

「ええ、そうです」小林絵里はうなずき、潤んだ瞳でまっすぐ彼を見つめた。「だから……サイン、してくれますか」

坂田和也の目から感情がすっと引いた。視線をそらし、差し出された離婚協議書には手も伸ばさないまま、きっぱり拒んだ。

小林絵里もめげない。書類を引っ込める。いずれ、彼が署名する日は来る。

ただ、悔やまれてならなかった。彼が毎日一通、離婚届を送らせていた頃――なぜあのとき、さっさと署名しなかったのか。

ほんとうに、どうかしていた。

坂田和也が食事を終えると、小林絵里はまた同じことを口にした。

「サイン、してくれますか」

坂田和也は冷えた目で見返す。「俺がしないと言ったら、毎日聞...

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