第684章

だが、彼は坂田和也じゃない。

  わたしも、同じ轍は踏みたくなかった。

  「あなたのこと、知りません。警察呼びましょうか。それとも、わたし帰ります」小林絵里は冷たく言い放つ。

  それでも男は、じっとこちらを見ていた。目の形が坂田和也によく似ている。どちらも細長い目元。ただ、その瞳には今、哀れみが満ちていて――白い紙みたいに、汚れを知らない。

  小林絵里は踵を返す。「行こ。帰るよ」

  松本桜が追いつき、たずねた。「ほんとに放っておくの?」

  「なんでわたしが面倒見なきゃいけないの?」

  「てっきり、拾ってあげるのかと思った。昔の感じ、思い出したくなるでしょ。こういうの...

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