第685章

坂田和也はぴたりと表情を止め、切れ長の目で彼女をまっすぐ見据えた。

「本当に更新しないのか?」

小林絵里は淡々と返す。

「いいえ。もうお金に困っていません」

「……」

一瞬、言葉が出てこなかった。

金で動かないなら、いったい何が彼女を引き留められる?

身体は日増しに回復している。裁判だって、いずれ始まる。姿を現さないままやり過ごすこともできなくはない――だが。

それは、解決じゃない。

欲しいのは、彼女との距離が少しずつ近づいていく未来だ。いまみたいな、形だけ穏やかな関係を保つことじゃない。

脆すぎる。

指先で触れただけで、ひび割れて崩れてしまいそうな薄皮。

小林絵りは...

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