第686章

「入れ」

 感情の起伏もなく、男はそう言った。

 病室のドアが開き、江口寧々が入ってくる。すでに血色が戻りつつある彼の顔を見て、彼女はベッド脇に立ち、複雑な目でじっと見つめた。

「まさか、あなたがそんなに腹の底が読めない人だなんて思わなかった」

 しばらくして、江口寧々はそう結論づける。

 坂田和也は冷めた視線を向けたまま言う。「利害が一致してただけだろ。今さらそれを持ち出して、意味あるのか?」

 DKグループとの協業で江口家がどれだけ甘い汁を吸ったか、彼女は一言も触れない。それなのに今になって、彼を「策士」扱いして責めてくる。

 江口寧々はバッグを握りしめた。「坂田和也、わた...

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