第699章

「うん」

 小林絵里はうなずき、斉藤子玄が車に乗り込んで走り去るのを見送った。

 その隣で松本桜が腕を組み、こらえきれずに言う。「ていうかさ、あの子も結構いいと思うんだけど。なんで考えてみないの?」

 絵里は心底うんざりした顔で桜を見る。「誰のことも考えないよ。あんたのこと考えればいい?」

 「えっ……ほんと? わたしのこと考えてくれるの? やっと見てくれたの? うぅ……感動……」松本桜は目を潤ませ、嬉しさを爆発させる勢いで絵里に詰め寄った。

 絵里の口元がぴくりと引きつる。次の瞬間、無言で車のドアを開け、そのまま乗り込んだ。

 桜も即座に追いすがる。「ねえ、待ってってば! さっ...

ログインして続きを読む