第702章

小林絵里は思わず小さくため息をつき、そのまま通話ボタンを押した。「もしもし?」

低く艶のある声が耳に流れ込んでくる。感情の起伏は読めない声色だった。

「小林絵里。もう二時間だ。どこにいる」

絵里は病室のほうへ視線をやり、言葉を選ぶように答える。

「こっちで急に用事ができて……今日は行けそうにありません。明日、市役所にしませんか」

「ふざけるな」

坂田和也は鼻で笑った。

「俺はお前の条件を飲んだ。すっぽかしたのはお前だ、小林絵里。誰もが、お前を待つほど暇じゃない」

絵里はそっと目を閉じた。――やっぱり、そうなる。

少し間を置いてから、かすれ気味の声で訊く。

「……じゃあ、調...

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