第704章

小林絵里の胸の内は、どこか複雑だった。だからこそ、頬に浮かぶ笑みはいっそう柔らかくなる。

「うん。待ってて」

 そう言い残し、彼女は立ち上がって部屋を出た。

 楓の苑へ戻ると、松本桜が待ち構えていたように駆け寄ってくる。

「どうだった? うまくいった? ねえ、もう何の用だったのか教えてよ」

 小林絵りは小さく息を吐き、首を振った。

「うまくいかなかったの。それどころか、トラブルだらけ」

「トラブル?」

 松本桜が目を丸くする。

 小林絵りは、今日道中で起きた一連の出来事を話した。さらに――本当は離婚の手続きをするつもりだったことも、もう隠さずに打ち明けた。

 話を聞き終え...

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