第708章

  介護士が氷嚢を持って戻ってくると、坂田和也は小林絵里の手をぐいっと掴み、奥の間を出て外間のソファに座らせた。間髪入れず、氷嚢を彼女の頬に押し当てる。

「っ……!」

  ひやりとした冷たさに、小林絵りは息を吸い込んだ。手を伸ばして言う。

「わたし、自分でできます」

「だめだ。力加減、わからないだろ」

  そう言って氷嚢は渡さない。隣に腰を下ろしたまま、彼がその手で当て続ける。

  ――は?

  自分の顔なのに、力加減がわからないわけがない。

  この距離が嫌で、小林絵里は奪い返そうとして手を伸ばした。けれど掴んだのは氷嚢ではなく、彼の手だった。

  坂田和也がくっと笑う。...

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