第71章

今はもう深夜だ。辺りは静まり返り、タクシーはおろか、人っ子一人歩いていない。

先ほどの気味の悪い電話を思い出し、小林絵里はすっかり気が滅入ってしまった。

彼女はバッグの紐をきつく握りしめると、口を開いた。

「わたしたち、もうすぐ離婚するんですよ? それなのにあなたの家に泊まるなんて、少し不適切じゃないですか?」

「それで、もう離婚したのか?」

坂田和也は彼女を見つめた。

「まだですけど」

「なら何をためらっている? なんだ、自分を抑えきれず、俺に良からぬことでも企むとでも思っているのか?」

小林絵里は、まるで正気でない人を見るような目で彼を見た。

「ふふっ、本当にナルシスト...

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