第711章

その質問に、小林絵里は答えづらかった。言葉を探しているうちに、結局、沈黙だけが残る。

高川寒彦は口元をつり上げて笑うと、すっと立ち上がった。

「俺は先に帰る。早く休め。何かあったら、いつでも電話しろ」

彼が席を立てば、小林絵りも反射的に立ち上がり、その背中を見送った。

扉が閉まった瞬間、小林絵里はこらえきれず、ふうっと息を吐く。

どうして、こんな方向に話が転がってしまったんだろう。

ソファに戻り、フルーツジュースを両手で包むように持って、ちびちびと口に含む。高川寒彦と知り合ってからの出来事を思い返すほど、こめかみがじんと痛んだ。

借りが、多すぎる。

でも、どう返せばいいのかが...

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