第722章

同じマンションに住んでいる以上、どうしたって顔を合わせる。

エレベーターに乗り込むと、小林絵里は階数ボタンを押し、壁際の隅へ身を寄せた。坂田和也の高く真っすぐな体躯が、狭い箱の中に圧迫感を満たしていく。鋭さのある端正な顔には余計な表情がなく、鏡面の壁越しに絵里を見ていた。

「うちで飯、食うか?」

「行きません」

別にお腹も空いていないし、夕食を抜くつもりだった。

「ほんとに? 俺の料理、味見してさ。ダメ出しでもしてくれよ。そうすりゃ……そのうち俺たちが別れることになっても、餓死はしない」

絵里は言葉を失った。

ちらりと視線を上げて、淡々と言う。

「あなた、料理できなくても餓死...

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