第732章

どうして……?

なぜ、藤原景丞が狙われるのか。

小林絵里には、どう考えても答えが出なかった。

「何考えてる?」

隣から、藤原景丞の声が落ちてくる。

絵里ははっとして思考を畳み、首を横に振った。「ううん、何でもない。行こう」

「……ああ」

景丞が短く応じる。

レストランを出た途端、彼のスマホが不意に鳴った。画面に出たのは、藤原千惠の名前。

「もしもし、千惠」

通話を繋いだ瞬間、景丞の声が自分でもわかるほど柔らかくなる。

受話口の向こうから、甘えた声が弾んだ。

「景丞兄さん、どこにいるの? 暇すぎて死にそう。会いに行っていい?」

「夕飯は?」

「うん、もう食べたよ」

...

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