第734章

小林絵里は一瞬、息をのんだ。たしかに――言われてみれば、そうなのかもしれない。

けれど、それは彼がこんな真似をする理由にはならない。

彼の気配から逃げるように視線をそらし、必死に冷静さを拾い集めて、小林絵里は言った。

「……わたし、前に病気だったんです。でも、病気はいつか治ります」

坂田和也が深く、深く見つめてくる。

「じゃあ……俺を受け入れる気はあるのか?」

「ありません」

小林絵里は迷いなく言い切った。

坂田和也の呼吸が、ふっと止まる。瞳の色がいっそう沈み、ほどけない夜みたいに暗くなる。

「小林絵里。……知ってるか。俺は、君の考えも気持ちも、いっさい無視して。力ずくで奪...

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