第735章

「いい」

 斉藤子玄はそう返した。

 小林絵里はぐずぐずしていられない。すぐに出発した。

 夜の闇は濃く、彼女は車で楓の苑を離れる。

 陰で護衛についていたボディガードが、ただちにその件を坂田和也へ報告した。

 書斎にいた坂田和也は部下の報告を聞き、表情を一瞬だけ止める。

「人を増やせ。彼女を追え」

「はい。では、坂田社長は?」

 坂田和也は薄い唇に、かすかな弧を描いた。

「俺は当然、法廷に出る」

「……」

 Y市から安町までは車でおよそ七時間。小林絵りはほとんど眠れないまま走り続け、孤児院に着くころには空はすっかり白んでいた。

 門を叩くと、ほどなく斉藤子玄が現れた...

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