第738章

  法廷にいた裁判官も弁護士も、どうにも気まずい空気を抱えていた。

  原告が来ない。これで、どうやって開廷しろというのか。

  彼らは皆、被告も姿を見せないだろうと踏んでいた。だが――

  結果は、真逆だった。

  ……

  坂田和也は機嫌よく車に乗り込むと、運転席の松本幸雄が尋ねた。

「坂田社長、どちらへ?」

「安町だ」

「かしこまりました」

  松本幸雄はすぐに察した。坂田和也は小林絵里のところへ向かうつもりなのだ。

  やれやれ……

  開廷が流れたのだ。坂田社長が浮かれないはずがない。きっと小林絵里の前で自慢する気だろう。

  空は雲ひとつない晴天だった。坂...

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